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今年も早いものであっという間に2月になろうとしています。世界同時不況という言葉がよく聞かれる最近ですが、果たしてどの国が引き金になるのか中国か?米国か?欧州か?
目次
なぜ世界経済を悲観する声が高まっているのか?
2019年は日本でもアメリカでも経済のファンダメンタルズがよいので、多少の減速はあるもののゆるやかな成長は堅持されるとの見通しが多いようですが果たしでそうでしょうか?
ファンダメンタルズはよいので不況はない
たしかに、日米の雇用統計や個人消費、そして住宅着工件数などの基本的な指標を見ると、伸びがスローダウンしている数値はありますが、そう悪くないように見えます。
そうした数値を見ると、「ファンダメンタルズはよいので不況はない」とする見通しにも、それなりの根拠があるように見えます。
4つの懸案事項
今までに世界経済の拡大を支えていた自由なグローバル経済の枠組みが崩壊しつつあります。
- トランプ政権の保護主義政策
- 米中の出口の見えない貿易戦争
- イギリスの合意なきEU離脱
- ナショナリストのポピュリズム運動
このような状況で、世界経済がこれから深刻な不況に突入し、日本を含め各国にも大きな影響が出てくるのではないかという懸念があります。
本当はどうなのだろうか?
ファンダメンタルズがよいので経済は大丈夫だとは言っていられない状況なのではないだろうか?そんな疑問があってもおかしくない。
本当はどうなのだろうか?
IMFが世界経済見通しを下方修正
そのようなとき、IMF(国際通貨基金)は2019年の世界経済見通しを発表しました。
これは、半年前に発表された見通しの下方修正となっています。
世界経済全体の成長率は2019年では3.5%、2020年は3.6%の見通しとなっていましたが、それぞれ前回の発表よりも0.2%、0.1%に下方修正されました。
各国の経済成長率
また、アメリカの成長率は従来と同じ2.5%に据え置きされました。
また、2020年に1.8%に減速すると予測しています。
共和党主導の減税措置の効果が薄れ、景気が金利上昇に反応すると指摘しています。
さらに日本の成長率については、政府が10月の消費増税を見据えた経済対策を発表したのを受け、2019年を1.1%、2020年を0.5%とそれぞれ0.2ポイントずつ予想を上方修正しています。
そして中国の今年と来年の成長率予想は6.2%に据え置いています。
インドの今年の成長率は従来予想より0.1ポイント引き上げ7.5%とし、2020年は7.7%との見通しを示しています。
IMFの各国の経済成長率の動向を見ると、2019年や2020年に世界経済の減速は限定的で、不況に突入するとは考えづらいような印象があります。
中国政府のGDP成長率
また、ほぼ同じタイミングで、中国政府は2018年度のGDP成長率を発表しました。
2018年の第4四半期(10月から12月)のGDP成長率は前年同時期と比べてプラス6.4%にとどまり、2018年の第3四半期の6.5%からは0.1%減速しています。

昨年1年間のGDPは6.6%で、これは天安門事件翌年の1990年以来、28年ぶりの低水準となっています。
中国経済の減速は大きく報道されているものの、これは中国政府が2018年の目標成長率が6.5%なので、たいした減速ではないのではないかとの印象があります。
貿易戦争による厳しい高関税の適用にもかかわらず、中国経済はそれなりに健闘しているように見えます。
IMFのドイツ経済減速
将来いずれかの時点で不況がやってくるとしても、少なくともそれは2019年や2020年ではないと言いう考え方が多くのエコノミストの考え方のようです。
しかし、IMFが発表した経済見通しの数値や、さまざまな機関が発表した中国経済の数値を見ると、こんな悠長なことをいっている状況ではないことが明確になって来ています。
IMFの見通しの焦点
IMFの見通しで焦点となるのは、ヨーロッパの数値です。
特にドイツ経済の減速が深刻になっています。

2019年におけるドイツの成長率の見通しは1.3%と昨年の10月の見通しから30%(0.6ポイント)も下方修正しています。
2017年のドイツの成長率は2.4%だったので、それと比べるとこの数値は、ドイツが不況に突入したと言ってもおかしくな数字です。
また、国債の利回り上昇が成長の障害となっているイタリアは0.4%の下方修正で、2019年と2020年はそれぞれ0.6%と0.9%の成長になっています。
黄色いベストの抗議運動
さらに「黄色いベスト」の抗議運動が続くフランスは、2019年が1.5%、2020年が1.6%で、2019年は0.1ポイントの減速となっています。
2019年におけるユーロ圏全体の成長率は、従来よりも0.3%低い1.6%です。
2017年が2.5%の成長率だったので、これは大きな減速です。
2019年は、イギリスの合意なきEU離脱や、EU解体を主張する極右政党の躍進が予想されているEU議会選挙など、結果が予測できない出来事が多い年になります。
これらの出来事の思わぬ結果からEU全体が不安定になり、ユーロ圏全体がさらに減速して、不況に突入するとの懸念もあります。
中国の製造業が急減速
しかし、これ以上に深刻な状況は中国です。
さまざまな機関が中国経済の数値を発表していますが、どれも予想を越えた数字になっています。
2018年12月の輸入は5%の増加を予想していたものの、対前年比で7.6%の減少でした。また輸出も、3%の増加を期待していたものの4.4%減少しています。
そのうち、スマホの輸出は前年度比、15.5%の下落、自動車の販売台数は5.8%の減少です。

また失業率も悪化している。2018年は4.9パーセントであった。これは、世界経済が実質的に収縮した2008年から2009年の金融危機のときの失業率、4.2パーセントと4.3パーセントよりも高い。このときは、この層の失業率の悪化による社会不安の増加が懸念された。
10年前ほどではないものの、中国の製造業は、依然として内陸部の農村から都市部に移動してきた農民工の労働に依存している。もしこの層の失業率が10年前の金融危機時の水準を越えて上昇すると、社会不安の背景にもなるとも懸念されている。
このような中国経済の状況を見ると、成長率は政府発表の6.4パーセントなのかどうか疑念が出てきてもおかしくない。政府が発表する統計値には以前から疑念があったが、それが再燃している。
中国は不況どころでない!?

そのようなとき、「中国人民大学」金融学部教授、向松祚( コウ ショウソ )教授は、参加した経済セミナーで驚くべき発表を行いました。
コウ ショウソ教授はある政府機関には中国の実質的な成長率の試算した内部報告書があり、それには2つの成長率が記載されているそうです。
そのうちのひとつは成長率を1.67%としています。
そしてもうひとつの試算はマイナス成長です。
もちろん、日本の主要メディアでは報道されていませんが、この コウ・ショウソ教授のこの発表は世界を駆け巡りました。
いくらなんでも1.67%とは低すぎるのではないかと異論も多いようですが、それでも公式成長率の6.4%よりははるかに低いはずだとの見方が一般的になっています。
万が一、 コウ・ショウソ教授のいうように中国の成長率は1.67%であったとすれば、これは改革開放政策の実施で中国の資本主義的な発展の端緒が切られた1978年以前の、1974年前後と同レベルの成長率です。
もしこれが事実なら、中国は不況どころではないです。
これまで40年間、中国の成長モデルであった国家資本主義の妥当性が問われる事態にもなりかねません。
もちろんこれは、これから世界経済に甚大な影響を与えます。
OECDの景気先行指数
また、最近発表されたOECD(経済開発機構)の景気先行指数もこれから深刻な不況に入ることを示唆しているようです。
これは、OECDが各国の経済指標から今後6カ月の景気動向を予測した数値です。
この数値が99.3を下回ると、今後数カ月以内に不況に突入する可能性が高くなるとしています。
過去に99.3を下回った1970年、74年、80年、81年、2001年、2008年と予測は的中し、すべて不況に突入しています。
景気先行指数は、昨年の11月に発表されたものが最新ですが、ちょうど不況突入の分かれ目となる数値の99.3でした。
ということは、昨年の11月から半年以内、つまり5月くらいまでに世界が本格的な不況に突入してもおかしくないことを示しています。
アメリカの危ない数値
また、IMFの経済見通しでは2.5%に据え置かれましたが2019年度のアメリカの経済成長率は楽観的な見通しを否定する数値が多いです。
住宅販売件数
住宅販売件数は、景況判断の重要な指標ですが、昨年12月の販売権数は11%と大きく下落しました。これは2016年以来最大の下落幅です。
新築住宅の販売件数
また新築住宅の販売件数に限ると、2018年12月はピークだった2017年12月と比べて18%も下落してます。ローン金利の上昇を受けて、2008年のリーマンショック以降比較的に順調に上昇していた住宅価格は、下落に転じる可能性が大きくなっています。
新卒者の求人件数
さらに、新卒者の求人件数も下落に転じています。
昨年末には、過去8年間で初めて求人数は1.3%下落しました。
ある調査機関によると、無作為に350名の新卒者を抽出して調査したところ、75%が就職できていなかっようです。
広がるアメリカ経済の悲観的な見通し
こうした状況を受けて、大手コンサルのPwCコンサルティングが1300社の大手企業のCEOに調査したところ、30%が2019年は不況になると回答しています。
2018年には5%だったので、これは大きなマイナス傾向にあります。
普通、企業の経営者は悲観的な見通しの公表を好まないものですが、今回は例外的です。
経済の落ち込む可能性を深刻にとらえている現れではないでしょうか。
また、大手投資銀行、モーガン・スタンレーの債権担当ストラテジストは、これから少しでも悪い数値が出てくると、ダウは昨年のクリスマスイヴの下げ幅を越えて下落し、それに伴い不況は確実にやってくると述べています。
モルガンスタンレー
さらに、メリーランド州議会の「予算税収委員会」に参考人として呼ばれた大手格付け機関、ムーディーズのアナリストは、すべての指標がこれから不況に突入することを示しているとし、遅くとも2020年の半ばまでには深刻な不況になるはずだと予測しています。
以上のような事柄から、2019年にも不況に突入してもおかしくない状況のようです。
1929年に少し似ているかも?
海外のメディアを読むと、楽観的な情勢判断はなりを潜め、経済の先行きを懸念する悲観的な見通しを伝える記事や番組が日毎に増えているのが分かります。
これは大恐慌の引き金になった1929年10月の「暗黒の木曜日」と似ているようです。

暗黒の木曜日 1929年10月24日、世界恐慌の始まった日。 さらに株価が再び大暴落した10月29日は「悲劇の火曜日」という。 1929年10月24日、ニューヨーク株式取引所で空前の株価大暴落が発生し、「世界恐慌」の始まりとなったのが木曜日であった。
出典:Wiki
1929年には設備投資、住宅販売、雇用率、個人消費などのファンダメンタルズが若干悪化しています。
しかしその下げ幅は景気循環の下降局面に典型的な水準だったので、翌年には自律的に回復できるレベルだったようです。
しかし、バブルで膨れ上がった当時の株式市場は、このファンダメンタルズの悪化に過剰反応してパニック売りとなり、株は大暴落しました。
そして、この大暴落が引き金となって発生した金融危機により、実体経済はどん底まで突き落とされた。その本格的な回復は、1940年代の戦時体制までかかりました。
つまり、ファンダメンタルズの悪化によって不況が徐々に進行したのではなく、市場の暴落による金融危機が実体経済を深刻な不況へと引き込んだ形になりました。
もしかしたら、いま世界はこの方向に向かっているのかもしれません。
アメリカや中国で予想を越えた悪い数値がひとつだけ発表されただけで、市場は暴落しかねません。
ファーウェイ番外編
先日、ファーウェイの孟晩舟・最高財務責任者(CFO)が、カナダで逮捕されたニュースは記憶に新しいところですが、米国への移送が予定されているようです。
同容疑者はファーウェイを創業した任正非氏の娘で、同社の副会長も兼務しています。
ファーウェイ広報は、「当社は本件に関してほとんど情報提供を受けておらず、孟氏による不法行為も認識していない」と述べ、「国連と米国およびEUの輸出規制や制裁法規制を含め、当該国の法規制は全て順守している」と強調しています。
ファーウェイ製品に対しては、各国の政府が国家安全保障上の潜在的リスクを理由に締め出す動きを強めている。米国は、中国政府がファーウェイのネットワーク技術を米国人に対するスパイ活動に利用する可能性があるとの見方を示しています。
まとめ
各国の経済が鈍化傾向にあるのは間違いないようですが、その引き金となるのが、ヨーロッパなのか?中国なのか?アメリカなのか?
「貧すれば鈍する」と昔から言うように、保護主義から移民弾圧へ、そしてナショナリストへという歴史のの流れはいつの時代も変わらないような気がします。
今ふっと思ったのですが、安部首相に子供がいれば日本の少子化対策も違ったのではないでしょうか?