『サザエさん』の新スポンサーに決定したアマゾンジャパン合同会社ですが、節税の裏技を使って日本では法人税を払ってないようです。その具体的な方法は_
目次
- 1 日本で税金を払わない理由は?
- 1.1 アマゾンの納税について考え方
- 1.2 怒る東京国税局
- 1.3 140億円の追徴課税
- 1.4 日本法人ジャスパー・チャン社長の見解
- 1.5 確かに両者には見解の相違がある
- 1.6 問題の本質は?
- 1.7 本社から販売業務を委託
- 1.8 日米の二国間協議
- 1.9 日米租税条約は不平等条約?
- 1.10 関係各国で結ばれた「租税条約」
- 1.11 グローバル節税?!
- 1.12 売上規模年間10兆円
- 1.13 .com会社のビジネス
- 1.14 世界の法人税は低下傾向
- 1.15 タックスヘイブン政策
- 1.16 国の財源を圧迫する
- 1.17 アマゾンの節税スキームとは
- 1.18 アマゾン戦略
- 1.19 具体的な優遇措置とは?
- 1.20 納税額の半分をアメリカへ
- 1.21 文句があるならアメリカ政府へ言え
日本で税金を払わない理由は?
アマゾンの納税について考え方
- アマゾンの商品の売主は「日本法人」ではなく、アメリカ合衆国のワシントン州にあるアマゾンの現地法人である。
- ゆえに、アマゾンは日本国内に支店等を有しない。
- よって、日本で稼得した利益に対して、日本の法人税を支払わず、アメリカで納税している。
怒る東京国税局
2009年(平成21年)7月に、アマゾンの流通センター内に米国法人の機能の一部が置かれており、これが法人税法および日米租税条約に規定する恒久的施設であるとした。
140億円の追徴課税
2003年(平成15年)から2005年(平成17年)について140億円の追徴課税を行った。これに対してアメリカのアマゾン本社側は日本円の140億円に相当する約1億2千万ドルを銀行に供託した。
しかしその後、日米当局間で協議が行われていたが、2010年(平成22年)6月に暫定的合意に達し、2010年(平成22年)9月に最終合意に至り、国税庁は銀行供託金の大部分を解放した。
日本法人ジャスパー・チャン社長の見解
2009年の週刊東洋経済によるインタビューにおいて、
「アマゾンは日本での売り上げを米国の統括会社に計上し、日本の法人税を負担していない。」国税庁に多額の追徴課税を命じられたのではとのインタビュアーに対して、「米本社が対応しており、このことについてコメントする立場にありません。」とのみ述べた。
確かに両者には見解の相違がある
日本の国税当局とアマゾンの間では、税法の解釈について見解の相違があるし、表面的にはそれがこの問題の要因だといえます。
問題の本質は?
実はそこにはないと思われるのです。なので、私としては、「日本の国税当局とアマゾンの税法解釈の対立」だけではない、別の面からこの問題の分析をしたいと思います。
「アマゾンが日本で法人税を払っていない」ということが、広く世間に知れ渡ったのは、2009年のことです。東京国税局が、アマゾンに対して140億円前後の追徴課税処分を行ったことがきっかけです。東京国税局は、日本で法人税を払っていないアマゾンに対して、「日本国内での販売収益に関しては、日本の法人税を払うべき」と指摘したのです。このニュースが報じられたとき、「アマゾンは日本で税金を払っていなかったのか」と世間で騒がれました。
外国企業であっても、日本で商売をし日本で収益を上げている会社は、原則として、日本で法人税を払わなくてはなりません。アマゾンがなぜ日本で法人税を払っていなかったのか? 簡単に言うと次のようなことです。
日本での販売業務は、アマゾンの日本子会社である「アマゾン・ジャパン」と「アマゾンジャパン・ロジスティクス」が主に行っています。
本社から販売業務を委託
「アマゾン・ジャパン」と「アマゾンジャパン・ロジスティクス」は、アマゾン本社から販売業務を委託されているという形になっておりますが、システム的に会社の利益のほとんどがアメリカ本社に吸い上げられる形になっており、日本ではほとんど利益が残らないのです。
そのため、アマゾン・グループは日本で法人税を払わなくなっているのです。それに対し、日本の国税当局は、アマゾン本社が日本から得ている収益は本来、日本で納税すべきとして、課税に踏み切ったのです。
日米の二国間協議
アマゾンのアメリカ本社はアメリカで納税しており、「日本で納税すれば二重課税になる」として、日本の国税当局に異議を唱えました。そして「日米の二国間協議」を申請したのです。要は、「アメリカ本国の税法に従って納税しているので、文句があるならアメリカ政府に言え」ということです。それで、実際に日本とアメリカの二国間協議になったのです。
その結果、日本が全面的に譲歩する形になったようです。
日米租税条約は不平等条約?
「日本で商売をして儲かった金は、日本で税金を払うべき」というのは、普通に考えれば当たり前の話ですよね? 日本企業が、アメリカで商売をして儲かった場合はアメリカで納税しています。にもかかわらず、なぜこういう無理なことがまかり通ったのでしょうか?
関係各国で結ばれた「租税条約」
実は、国際間の税金ではこういうことは、よくあることなのです。他国籍企業やグルーバルで収入がある人の税金については、関係各国で結ばれた「租税条約」に基づいて課税されることになっています。「租税条約」というのは、表面上は、お互いの国が平等にできています。しかし、細かい実務の運用となると、両国間での協議となります。そして、両国間の協議では、その国同士の力関係が大きくモノを言いいます。
たとえば...
日本のプロ野球に来る助っ人のアメリカ人は、日本で所得税を払うことはほとんどありません。が、日本人選手が大リーグに行った場合は、アメリカで所得税を払っていることがほとんどなのです。
日本とアメリカの外交関係は、表向きは平等になっています。しかし、実務運用面となると、アメリカ有利になることが多々あるのです。日本とアメリカとの関係は、今でも実質的には「不平等条約」ようです。
グローバル節税?!
もちろん、アマゾンのこのようなグローバル節税に対して、世界各国も黙っているわけではありません。
つい最近も、EU(欧州連合)が「アマゾンはルクセンブルグで不当に税を逃れている」と断定し、ルクセンブルグ政府に対して追徴課税をするように指示しました。
【ブリュッセル=森本学、シリコンバレー=中西豊紀】欧州連合(EU)の欧州委員会は4日、ルクセンブルク政府が米アマゾン・ドット・コムに最大2.5億ユーロ(約330億円)の「違法」な税優遇を与えていたと認定し、追徴課税で取り戻すよう同国に指示した。同委はこれまでも米アップルへの追徴課税をアイルランド政府に求めるなど、巨大企業の「税逃れ」を厳しく指摘してきた。国際的な課税のあり方が改めて問われそうだ。
日経新聞2017/10/4 22:45
またイギリスでも、アマゾンやグーグルなどのアメリカ系グローバル企業の税逃れを防ぐ法案をつくりました。EUやイギリスになると、アメリカ政府が出てきたとしても、それなりにモノが言えるので、アマゾンとしてもかなり手強いということになりそうです。
売上規模年間10兆円
またアメリカ本国でも、アマゾンがその収益に対してまっとうな税金を払っていないとして、批判されることもあり、年間売り上げは10兆円をこえる企業が10%を超える高い利益を上げておきながら、数百億円程度の税金ではあまりに少なすぎるとの声もあるようです。
.com会社のビジネス
確かに売り上げに対する納税額からすれば税金が低すぎるかも知れませんが、従来の考え方を踏襲したものであり、そもそも法人税じたいが高すぎるのかも知れないという考え方もあると思います。
世界的に見て日本の法人税率は高めで、法定実効税率(所得税・住民税など税の合計)は、29.97%となっています。OECD加盟国を対象とした主要国ランキングだと、先進国の中ではアメリカ、フランス、ドイツに続いて、4位となっています。
世界の法人税は低下傾向
かつて、安倍内閣は「法人税率20%台」を掲げていました。
2018年1月現在、その「法人税2割台」の公約は達成されたとされていますが(正確には29.97%)、世界敵に見て、日本の法人税率は依然として高いことは言うまでもありません。
近年、世界各国において法人税率は低下の傾向にあります。
1990年代、日本の法人税率は最大50%となっていました。ただ、当時はフランスやイタリアといった欧州各国も法人税率が40%超で、特にドイツは最大で54.5%まで上がった時もあったのです。
タックスヘイブン政策
しかし、グローバル経済が世界の隅々にまで浸透した結果、世界中の企業がより税率の低い国に登記することで、コストダウンする企業戦略を選択するようになりました。
それらの戦略は先述したように「タックスヘイブン政策」と呼ばれており、以下のような国々が有名です。
- ルクセンブルグ
- アイルランド
- モナコ公国
- サンマリノ
- バミューダ諸島
- ケイマン諸島
- ドバイ(アラブ首長国連邦)
- バーレーン
- 香港
- マカオ
- シンガポール
世界各国の企業や政治家や著名人が、そのタックスヘイブンを利用して租税回避を行っている情報をリークしたパナマ文書やパラダイス文書の存在も記憶に新しいところでしょう。
また、そのようなタックスヘイブン政策を掲げる国家が増加したことで、先進諸国の法人税率が低下傾向にあります。
国の財源を圧迫する
法人税を下げることで、その分の国家財源が減少し、国の財政を圧迫します。
だからといって所得税率を上げれば、企業と同様に、国内の富裕層もタックスヘイブンへと流れていってしまうからです。その結果、もっとも確実に税収が期待できる「消費税の増税」がうながされるという構造が指摘されています。
ただ、日本企業の海外進出において、タックスヘイブンを含めた、世界的な法人税率の低下傾向は、大きなチャンスでもあります。
海外で事業を拡大するならば、海外のタックスヘイブンに拠点を移して節税をし、関連会社を設立して投資や取引を実行することは、グローバル経済において極めて有効な手段です。
例えば、アジアの新興地域へ進出するにあたって、その統括拠点として、低税率として知られる香港やシンガポールを活用することは、至極まっとうな選択肢であり、タックスヘイブン対策税制の上でも非常に効果的です。
アマゾンの節税スキームとは
アマゾンは、現在、先進国を中心に、世界中でビジネスを行っています。
そして、アマゾンはタックス・ヘイブンをうまく活用して、大幅な節税を行っていることで知られています。
アマゾン戦略
アマゾンは、子会社を税金の安いタックスヘイブンに置き、グループ全体の利益をそこに集中させて、節税をしているのです。
例えば...
- クレジットの決済機能をアイルランドのタブリンに
- ヨーロッパでのビジネスの利益はルクセンブルグに
アイルランドもルクセンブルグも、世界的にタックスヘイブンであり、特にルクセンブルグは、アマゾンに対しては特別な税の優遇措置を講じています。もちろん、これは世界中から非難を浴びています。
具体的な優遇措置とは?
ルクセンブルクのアマゾンの販売子会社がウェブサイトの使用権などを名目で使用料を払います。その使用料を支払うことにより納税額を減らす仕組みを使ったようです。
納税額の半分をアメリカへ
アマゾンは、グループ全体の納税額の半分をアメリカで納めています。
2013年を例にとると、アマゾンは全世界で300億円程度の税金を納め、その約半分はアメリカに納めています。
アメリカにもっとも多くの税金を納めることで、アマゾンはアメリカの税務当局の心象をよくしているようです。
文句があるならアメリカ政府へ言え
そのため、アマゾンが他の国から課税問題でもめたときには、「文句があるならアメリカ政府に言え」ということができるのです。
アメリカの税務当局は、アマゾンが他の諸国で税金を払うよりは、自国で税金を払ってもらいたいと思うわけです。結果、アメリカの税務当局がアマゾンの後ろ盾になる形で、アマゾンのグローバル節税が可能になっているのです。