世界的観光地として有名なフランスでairbnbがホテルを廃業に追い込んでいます。日本も今年6月から民泊新法が施行されますが、大丈夫なのでしょうか?フランスの現況と日本の民泊新法について調べてみました。
目次
民泊人気でホテル廃業
フランスでは、去年1年で、800軒のホテルが廃業したというのです。
過去20年で最多の数です。
原因は、民泊の人気が高まり、ホテルの利用客が減少したことです。
ある四つ星ホテルでは、競争に打ち勝つため、5,000万円をかけて改修しましたが、お客は戻らず廃業に追い込まれたといいます。
今は何とか営業していても、従業員を解雇せざるを得ないホテルも出ていて、ホテル業界は困難な状況に追い込まれているのです。
年間800軒のホテルの廃業…は、民泊は、宿泊施設不足を補うものではなく、宿泊施設を食いつぶすものです。
フランスのホテル業界関係者、「フランスはAirbnbにやられてしまったが、日本はまだ間に合う、フランスと同じ轍を踏まないでほしい。現在フランスでは1日に1軒のホテルが廃業か倒産に追い込まれている」
1日1軒が廃業となると年間300~400軒という計算になりますが....
昨年は、その2倍以上が廃業したというのです。
パリ市内の家賃相場は数年で急上昇
そして、問題を抱えるのは、ホテル業者だけではないのです。
アパートなどの所有者がより利益の上がる民泊営業に物件を回したため、パリ市内の家賃相場は数年で急上昇していきました。
民泊物件へ回すために賃貸契約の約25%が契約更新されず、住人は住居を失い高額な物件を探してやむなく賃貸し直すか、郊外へと引っ越しを余儀なくされたといいます。
特に観光客が多い地域では、住民が減り閉鎖に陥る学校も出ています。
増えるまた貸し
住民は、高額な家賃を払うために自分たちが使用する部屋数を節約して減らし、空けた部屋を利用し民泊で稼がなければならないという悪循環もあるといいます。
空いている部屋を貸すのではなく、家賃を支払うために一部屋を民泊に貸し出すという形も増えているようです。
テロの危険性の問題
そして、あまり報道されませんが、2015年のパリ同時多発テロでは、その主犯が潜伏先として民泊を利用していたといわれます。
最近、日本でも、民泊施設が犯罪に利用されたケースもいくつか報道されています。
日本の民泊は大丈夫か?
・民泊新法が6月からスタート
平成30年6月15日から施行される民泊新法(住宅宿泊事業法)は、一定の基準を満たす住宅について、届出手続を行うだけで民泊営業を開始することを認めるものです。
個人が、簡単な手続により、空き家や空き室等の遊休資産を活用して民泊を合法的に行うことを可能にするものです。
多くの住宅が届出の対象となります。
このように、民泊新法の届出手続においては、一定の基準を満たすかどうかの確認は行われますが、簡易宿所の場合に求められるフロント受付台の設置やエリア限定、又は特区民泊の場合に求められる平米数要件や設備要件のように、通常の住宅が当然に備えているとは言えない要件や、要件を満たすために大がかりな改修等が必要とされるような要件は設定されていません。
住宅であれば、広く、届出手続をクリアできる可能性があり、合法的に民泊営業を開始できる可能性があります。
なお、対象は住宅に限定されていますので、住宅ではない商業施設等の建物において宿泊サービスを提供する場合には、旅館業法に基づく営業許可等の取得が必要となります。
届出手続においては、氏名、住所、連絡先、届出住宅の所在地、家主不在型か家主在住型かの別等を記載した届出書に加えて、所定の書類を添付して提出する必要があります。
個人が届出を行なう場合には、主に、次の書類を提出する必要があります。各届出書類の詳細や具体的な記載事項については、今後、ガイドライン等により示されることになると思われますが、必要書類は多数におよび、また、①、②、④のように法務局や市役所で取得する必要がある書類が必要となる他、⑧のように第三者の署名・捺印をもらう必要がある書類を準備しなければならない場合もあるため、それなりに準備が必要となります。適宜、行政庁や行政書士等の専門家にご相談いただき、周到に準備を進めていただければと思います。
- ①成年被後見人及び被保佐人に該当しない旨の後見登記事項証明書(法務局にて取得)
- ②成年被後見人及び被保佐人とみなされる者並びに破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者に該当しない旨の証明書(市役所にて取得)
- ③欠格事由非該当誓約書(所定の書式への署名捺印が必要)
- ④住宅の登記事項証明書(法務局にて取得)
- ⑤賃貸用の物件を活用する場合には、入居者の募集広告等、入居者を募集していることを裏付ける書類
- ⑥生活の本拠ではないが、随時、居住している物件(別荘等)を活用する場合には、そのことを裏付ける書類(利用実績にかかる報告書を作成することになると思われる。)。
- ⑦住宅の図面(台所、浴室等の設備の位置や、間取り、床面積の表示があるものが必要)
- ⑧所有物件ではなく、賃借物件を活用する場合には、賃貸人(大家)による転貸承諾書(転借物件である場合には、直接の賃貸人及び転貸人両者の再転貸承諾書)
- ⑨分譲マンションを活用する場合には、その管理規約
- ⑩⑨の管理規約に、住宅宿泊事業法に基づく民泊の可否についての明確な規定がない場合、分譲マンションの管理組合に、民泊事業を禁止する意思がないことを確認したことを証明する書類(詳細については、「民泊新法施行以降の届出について」を参照してください。)
- ⑪住宅宿泊管理業者に届出住宅の管理を委託する場合には、住宅宿泊管理業者との間の管理受託契約書
・届出義務の違反のペナルティは重い
民泊新法に基づく届出を行うことなく民泊を行った場合、旅館業法に違反し、刑事罰が科される可能性があります。
現状、その場合の罰金刑の上限は3万円ですが、罰金刑の上限を100万円に変更する旅館業法の改正が検討されています。
同改正が実現した場合は、無届出の民泊営業に対し、6ヶ月以下の懲役刑もしくは100万円以下の罰金刑のどちらか、又は、両方が併せて科される可能性があります。
また、民泊新法に基づく届出は行った場合でも、届出に虚偽の事実が含まれていた場合は、旅館業法違反ではなく、民泊新法違反となり、この場合も、6ヶ月以下の懲役刑もしくは100万円以下の罰金刑のどちらか、又は、両方が併せて科される可能性があります。
・違法な民泊に対する取締りが強化
違法な民泊に対する取締りは、これまでは、必ずしも積極的に行われてきませんでした。
民泊新法の施行後は、市民からの苦情を端緒として国及び都道府県が連携して取締りを行う体制が構築されることになると思われます。
無届けの民泊やルールを守らない民泊に対する取締りの強化が予想されるところです。
airbnbは日本のホテルを廃業に追い込むのか?
法律がきちんと守られれば、すぐにはフランスのようにならないと考えますが、その法律がしっかり守られないと、意味がありません。
不法民泊の取り締まり強化は不可欠です。
その上で、合法民泊が、今後、どのようになっていくかは不透明です。
すでに、大阪、福岡等の都市で、ホテルが取りにくいという状況は改善されていると聞いています。
今後、日本も、フランスのように、ホテルの不足を民泊が補うのではなく、ホテルのお客を民泊が奪う時代に入る予感がします。